取組紹介・コラム

全国308自治体調査から見えた選挙DXの現在地とインターネット投票の可能性

全国308自治体調査レポート

全国308自治体調査から見えた
選挙DXの現在地

人手不足、投票所への移動負担、開票業務の長時間化、そしてインターネット投票への期待と不安。 全国43都道府県・308自治体より回答が得られた調査結果から、自治体の選挙運営が直面する課題と、今後求められる投票システムの方向性を読み解きます。

308
回答自治体数
43
対象都道府県
84%
人員確保を課題と認識
53%
投票所までの移動を課題と認識

1. 調査概要

本調査は、全国の自治体を対象に、選挙運営上の課題、インターネット投票への認識、導入にあたっての懸念事項などを把握する目的で実施したものです。 回答は全国43都道府県・308自治体から得られており、都市部から地方部まで幅広い自治体の実態を把握できる内容となっています。

項目 内容
調査対象 全国自治体の主に選挙・投票担当部門:選挙管理委員会・総務課
回答自治体数 308自治体
回答都道府県 43都道府県
調査期間 2026年5月20日から7月24日まで
調査方法 Webフォームでの回答取得
※ご回答いただいた数自治体に電話にて追加ヒアリングを実施
主な調査テーマ 選挙運営課題、投票環境、インターネット投票への期待、導入上の懸念

2. 回答自治体分布

今回の調査では、北海道から九州・沖縄まで、全国各地の自治体から回答が寄せられました。首都圏や大都市圏だけでなく、地方部・中山間地域・離島を含む自治体の回答も含んでおり、選挙運営課題が全国共通のテーマであることが分かります。

3. 選挙運営最大の課題は人手不足

調査結果で最も大きな課題として挙がったのが、投票所・開票所の人員確保です。約84%の自治体が人手の確保を課題として認識しており、従来型の紙投票・紙開票を前提とした運営モデルの持続可能性が問われています。
また、追加で実施したヒアリングでは、「投票立会人の確保が年々困難になっている」との意見も聞かれました。高齢化により長時間の立会いが難しくなっているほか、任期満了以外の理由で実施される突発的な選挙では、立会人の日程確保が難しいケースもあるとのことです。

図1 選挙運営上の主な課題

人員確保
 
84%
選挙費用
 
47%
開票業務の効率化
 
43%

選挙運営上の主な課題。投票所・開票所の人員確保が最も大きな課題として挙げられている。

選挙運営では、投票受付、投票所運営、開票作業、集計確認、立会人対応など、多くの人手が必要です。 急な選挙や複数選挙の同時実施では、職員の負担が増大し、深夜まで開票作業が続くケースもあります。

4. 投票参加を妨げる要因

運営側だけでなく、有権者側にも課題があります。 特に、投票所までの移動や交通手段の確保は大きな問題となっており、約53%の自治体が課題として認識しています。

図2 投票参加上の主な課題

投票所までの移動
 
53%
バリアフリー対応
 
22%
郵便投票・代理投票の制約
 
21%

投票参加上の主な課題。高齢化や公共交通縮小に伴い、投票所への移動負担が課題となっている。

高齢化や人口減少が進む地域では、投票所までの距離や交通手段の不足が、投票参加の障壁になりつつあります。 今後は、投票所に来てもらう前提だけでなく、投票機会をどのように確保するかという視点が重要になります。

5. インターネット投票への期待と慎重論

調査では、約29%の自治体がインターネット投票について「実施すべき」または「積極的に検討すべき」と回答しています。 一方で、約68%は「慎重に検討すべき」と回答しており、期待と不安が並存している状況が見て取れます。

図3 インターネット投票への考え方

慎重に検討すべき
 
68%
推進・積極検討
 
29%
その他
 
3%

インターネット投票への考え方。前向きな期待がある一方、制度面・安全面への慎重な意見も多い。

また、追加ヒアリングでは、以下のような意見も伺いました。

  • 開票・集計業務の効率化や、選挙に従事する職員の負担軽減が期待できる
  • 投票所の統廃合が進む地域や、投票所への移動が困難な高齢者・障害者の利便性向上が期待できる
  • なりすまし防止を含む本人確認の信頼性を十分に確保する必要がある
  • 投票の秘密や公正性をどのように担保するかについて慎重な検討が必要である

重要な読み解き

注目すべきは、インターネット投票への慎重な回答が、必ずしも反対を意味しているわけではない点です。 多くの自治体は、本人確認、投票の秘密、セキュリティ、制度面の整備が担保されることを前提に、導入可能性を見極めようとしています。

6. 自治体規模別分析

同じインターネット投票でも、自治体規模によって期待される効果は異なります。 大都市では投票所数や開票作業量が多いため、業務効率化やコスト削減が主要テーマとなります。 一方、小規模自治体では、職員不足、高齢化、投票所への移動負担がより切実な課題となります。

自治体規模 想定される主な課題 インターネット投票に期待される効果
大都市・政令指定都市 投票所数の多さ、開票作業の大規模化、職員動員負担 開票迅速化、集計効率化、運営コスト削減
中核市・一般市 人員確保、投票率向上、事務負担軽減 投票機会拡大、事務効率化、無効票削減
町村・小規模自治体 職員不足、高齢化、投票所への移動負担 移動困難者支援、投票アクセス向上、持続可能な運営

7. 自由回答テキスト分析

自由回答を分析すると、自治体の現場で特に重視されている論点が浮かび上がります。 「本人確認」「セキュリティ」「人手不足」「投票率」「高齢者」「交通手段」「開票」などのキーワードは、選挙DXを検討するうえで重要な視点です。

カテゴリ 代表キーワード 示唆
運営負荷 人手不足、開票、職員、立会人 選挙運営を支える人員確保が難しくなっている
住民利便性 高齢者、移動、交通、障害者 投票所に行くこと自体が負担となる層への対応が必要
セキュリティ 本人確認、なりすまし、不正、投票の秘密 導入可否の最大論点は信頼性と安全性
制度面 法改正、公職選挙法、運用、ルール 制度整備と実務運用をセットで検討する必要がある
DX推進 電子投票、オンライン、効率化、デジタル化 段階的な導入や実証から始める余地がある

8. 選挙DXに求められる5つの要件

調査結果から見えてきたのは、自治体が求めているのは単なるオンライン化ではなく、信頼性の高い投票環境であるという点です。 今後のインターネット投票や電子投票には、以下の要件が求められます。

要件 内容
本人確認 なりすましを防ぎ、投票者本人であることを確認できる仕組み
投票の秘密保持 誰がどの候補・選択肢に投票したかを第三者が把握できない仕組み
セキュリティ サイバー攻撃や不正アクセス、改ざんへの対策
監査性 投票・集計プロセスを後から確認できるログや証跡
使いやすさ 高齢者やデジタルに不慣れな人でも迷わず使えるUI

9. 段階的に進める選挙DXロードマップ

インターネット投票は、すぐに公職選挙へ導入するだけが選択肢ではありません。 まずは、制度面の制約が比較的小さい領域から段階的に活用し、運用知見を蓄積していくことが現実的です。

Phase 1

住民アンケート
意見募集

Phase 2

組合選挙
団体内投票

Phase 3

住民投票
模擬選挙

Phase 4

制度整備後の
公職選挙活用

10. オンライン投票システムの活用領域

投票システムの活用先は、公職選挙だけではありません。 公平性・透明性・効率性が求められる意思決定の場面で、幅広く活用できます。

活用領域 想定される用途
自治体 住民アンケート、住民投票、附属機関委員選定、模擬選挙
労働組合 役員選挙、議案承認、労働者代表選出
企業 社内投票、株主総会、各種意思決定、消費者参加型PR(〇〇総選挙)
学校法人・大学 学長選考、教授会、学生自治会選挙、学内アンケート
団体・協会 役員選挙、総会議決、会員投票

選挙DX・オンライン投票について相談してみませんか?

「投票率を向上させたい」「選挙運営の負担を減らしたい」「本人確認やセキュリティを担保したい」 そうした課題に対して、制度面・運用面・システム面を含めた最適な進め方をご提案します。

また、自治体、労働組合、企業、学校法人、協会・団体など、目的や規模に応じたオンライン投票の活用方法をご相談いただけます。