課題解決の事例

 紙媒体、PDFのその先へ——今治市が目指す、誰にでも分かりやすく、広く伝わる広報

今治市(愛媛県)

業務領域
広報広聴
サービス
マイ広報紙(スタンダードプラン)

課題と解決策

課題

視覚障害者や増加する外国人住民への情報提供が不十分という課題があり、自治体全体のDX推進が加速する中、ウェブアクセシビリティへの対応も重要視されていた。

解決策

住民の多様化にも配慮したデジタル広報を実現に向け、音声読み上げや多言語翻訳の機能を備えた「マイ広報紙」のスタンダードプランを導入。

効果

職員の手間なく、広報紙のデジタル化を実現。ウェブアクセシビリティ対応や検索性の向上も実現し、誰もが探しやすく、読みやすい広報紙に。

課題解決の取り組み

目次
写真:今治市庁舎

愛媛県今治市は県の北東部に位置し、瀬戸内しまなみ海道の玄関口として知られています。四国北西部に広がる高縄半島の東側と、瀬戸内海に点在する芸予諸島の島々からなる、海と山に囲まれた市です。造船業、海運産業や繊維工業を基幹産業として発展し、「今治タオル」は全国的にも高い知名度を誇っています。

1. 背景

視覚障害者、外国人住民への情報発信の課題

今治市では、視覚障害のある方に対しての情報提供は充分か、という課題意識が高まっていました。さらに、市内では人口に占める外国人割合が約10年で1.5倍に増加しており、特にフィリピン人やベトナム人の居住者が年々増えています。こうした背景も踏まえ、従来の紙媒体の広報だけでは、外国人住民にも十分な情報提供ができていないのではないか、という課題感もまた強まっていました。

PDF掲載だけでは情報が届きづらい

また、市では広報紙を紙媒体で配布するほか、PDF形式でホームページに掲載してきました。しかしPDFという形式上、多言語への翻訳や音声読み上げへの対応が難しく、アクセシビリティの面での課題がありました。さらにブラウザ検索との親和性が低く、日常的にスマートフォンなどで情報収集を行う住民にとっては、目的の情報にたどり着きにくい状態でした。

デジタル移行の追い風と、求められるアクセシビリティ

自治体全体としても「てのひら市役所」をはじめとした行政手続きのオンライン化・DX推進が進んでおり、紙媒体からデジタルへと移行する流れが加速していました。高齢者や障害者、外国人住民を含めた誰もが、インターネット上で行政サービスを利用したり、市の情報を受け取ったりしやすくするために、ウェブアクセシビリティへの対応を重要視する機運が高まっていました。

「マイ広報紙」導入を検討

その中で注目したのが、広報紙をテキストデータ化し、インターネットで配信するサービス「マイ広報紙」でした。「マイ広報紙」は、サイト自体がウェブアクセシビリティに対応しており、広報紙記事の音声読み上げや多言語翻訳も機能として備えています。また、記事をテキストデータ化して配信することにより、ブラウザ検索を行った際も必要な情報に辿り着きやすいのが特長です。

誰にとっても読みやすく、分かりやすいかたちで広報を届ける手段として、今治市は「マイ広報紙」スタンダードプランを導入するに至りました。

2. 導入の理由と決め手

情報が伝わりやすくなることでつながる、住民と行政

今治市では総合計画の基本構想として「“心地いい”まち」となることを目指しており、住民と行政がつながり、支え合える関係性の実現に力を入れています。その実現のためには、住民が市政をもっと身近に感じられるような仕組みの構築が重要でした。

「マイ広報紙」の導入は、視覚障害のある方や外国人住民など多様な人にも広く情報を届けることができ、住民が市の情報に接する機会が増えるという効果が期待されました。

デジタル広報がひらく、暮らしと地域の未来

さらに、デジタル広報を通して、住民が日常的にデジタルに触れる機会が増えることで、結果として行政サービスや自治会業務などの身近な暮らしのDX推進にも繋がりやすくのではないかいう期待もありました。

さらに、広報紙の検索性が向上することによって、地域の魅力がより伝わりやすくなれば、市外の人や移住希望者へのアピールにもなり、地域活性化や定住促進にもつながるのではないかという狙いもありました。

3. 導入後の効果と今後の展望

手間なく広報紙をデジタル化──まず見えた初期効果

導入から間もない今治市では、広報紙を手間なくデジタル化できていることが、現時点での大きな成果として挙げられています。そのほかの効果については、今後の「マイ広報紙」の閲覧状況や住民の反応などをふまえながら、検証していく予定です。

“これから”を見据える、取り組みの姿勢

今後の展望として、今治市ではデジタル広報紙の閲覧数を増やすことと、その効果測定を行うことを目標としています。他の「マイ広報紙」導入自治体の実際の事例なども参考にしつつ、住民への周知の仕方や導線の整理を行い、工夫していく方針です。

また、「マイ広報紙」において、まだ活用できていない「お知らせ投稿機能」や「辞書機能」も、今後活用していきたいとのこと。サービスを導入して終わりではなく、備わっている機能をどう活かせば住民にとって良い情報発信になるか、を模索し続けている姿勢は、今後デジタル広報に取り組む他の自治体にとっても、大いに参考になるスタンスといえそうです。

(2025年7月23日掲載)
※自治体情報・肩書などを含め、本事例ページに記載された内容は取材当時(2025年7月)のものです。